DSM-5の謎

with コメントはまだありません


DSM-5の本を読んでいる。
幾つか、疑問を感じるところがある。
 
例えば、コミュニケーション障害や発達障害の
記述について…。自閉症についてもそう思うのだが、
コミュニケーションにおいてトラブルの原因と
なったり、コミュニケーションを行わなかったり
すると、「障害」や「症状」に分類されている
という疑問。
 
正常な人間は、ほどよく友達と付き合い、
喧嘩をしても笑えるレベル、ほどよく話し、
黙るべき時は黙る…そこを外れると「障害」「症状」。
わからない。これは、精神医学の僭越のように
思うが、どうか。管理を外れる人間は、
罪を犯してはじめて「外道」であって、
社会に従順でない人間を「病気」「症例」とするのは
何だろう?と思う。
 
もう一点は、妄想症や、その他の病気の「妄想」
について。文化的に許容される範囲の事であれば
「妄想」でない、という但し書きがある。これは
宗教や信仰の事を指しているだろうと思われる。
 
被害妄想にしても、大なり小なり被害を受けている人が
被害を拡大して妄想するケースは見られるし、
どこから先が妄想で、どこから先がそうでないのか。
 
これもまた、精神医学の僭越のように思うのである。
失恋して狂騒状態が続いている人と、双極性障害を
どう見極めるのか?文化的背景、環境的背景を
考慮しないと診断できない…という精神科医というのは、
よっぽどの教養と、よっぽどの精神の正常性を
要求されているような気がしてしまう。
 
それは、「軽度の」の分類や、新たに分類を増やした
事による弊害のように思う。DSM-5をまともに読むと、
これを診断できるのはそれこそ、神や仏しかいないのでは
ないかと思うのである。それが精神医学の深さ、と言われれば
それまでだが…。
 
フロイトは、患者の治療にコカインを使った事がある。
それは、当時でも、非難する人があったようだ。
コカイン使用の是非を言いたいのではなく、フロイトの
夢判断を読んだ後にDSM-5を読んでいるので、こと、
精神医学というのは、本当に「謎」としか言いようがない。
 
ただ思うのが、精神科医の診断はどうあれ、
患者自身、自分自身が、医療に留まらず、
文化的、人間的に克服していって、この意地の悪い
分類主義の網から逃れていかないと、寛解はないな、
と思った。
 
文化的、人間的に縛られていく人間は、ますます
寛解から遠ざけられるような仕組みにもなっていて、
そこに医療や福祉の手を継ぎ足していっても、薬が
増えるだけであるからして!社会的に自由で
強い人間が有利な診断の根拠のようにも思える!
 
書いてある内容は、実に社会学的なのだが、
精神医学は、いつから、無謬性が強くなったのだろう、
と僕は思う。無謬性がないと、気違いを気違いと
言えないからなのだろうが、それは、精神医学が
拡張志向である事の、自業自得と言えまいか。
 
昨今の傾向として、「軽度な精神障害」の内々に、
予防的に治療をしよう…という傾向が見られる。
自殺のサインを発見しようだとか、幼少期から
発達障害や自閉症の治療に取り組もう…だとかである。
前述したように、「軽度」の予防的治療には
リスクがある。それを、医療畑の方々はどう
お考えだろうか?
 
DSM-5に関する、素朴な疑問や疑念が、
服薬不要論、根性論にすり替えられている
現状…。画像診断や血液検査、遺伝的影響度も
不確かなまま(存在しない症例が多すぎる)、
大人、青年、児童、そして
幼児や乳児にまでその範囲を広げていく精神医学と
いうのは、人間の人間性、精神性に対する
敬虔さを失っていないだろうか?
 
こと…児童の精神というのは時に自由で
カオスである場合も多く、そこに、精神的な病理を
見出す事は、形式的に審査しても破綻した論理のように
思うが、狂っているのは誰だろう?
それに疑問を持たない精神病理畑というのは、
いったい、どんな植物を育てているのか?
 
現代の呪術にも等しい。僕はそんな風に思う。
呪いや、畏れ、怖れ、負の感情を克服しようと
思うあまり、意味不明な体系を作り続けて
自分たちが安心を得ようとしているのではないか。
 
現代、多くの国家が民主的国家だからまだ
何とかなっているが、精神医学が発展したまま、
独裁的な、ファシズム的な国家が誕生した場合、
どうなるか?というのは、いつか来た道である。


この記事について
このページは、に最初に書かれました。
その後も、内容を更新したり、削除したりする場合があります。
古い記事は、内容が古くなっているか、間違っている場合があります。
その場合でも、訂正や修正をしない事もあります。
また、記事は、用語の厳密性に欠き、表記揺れも含みます。
厳密な調査に基づいた記事ではありません。これは筆者の主観です。
怪文章のようなものもありますので、回覧にはご注意下さい。
自分でも、「馬鹿が馬鹿言ってる」と思うような記事もございます。




SiteMap | ページ一覧 | サイトマップ