ひとつ前のブログで、今のCOVID-19をめぐる状況はscriptlessだと書いた。ポストモダン、現代思想というものや、現代文学というものは、現在の皮肉な状況を間接的には表現してきたと思う。だが、ウィルスというテーマにおいて、ウィルスは害をなすもの、という以上のアイコンを与える事はできなかった。そういう意味では、様々な天才がこのジャンルにいながら、あらかじめ社会的にワクチンを与える事はできなかった、という事だ。
それならば、僕の議論も、全ては後出しジャンケンであると言えるだろう。
「コロナはただの風邪」というようなフレーズがあって、その一方で「コロナは人類が対処すべき最重要問題」というフレーズがある。後者の方が圧倒的に強いのは、「ウィルスとは怖いもの」「恐怖すべきもの」「遠ざけるべきもの」「駆逐すべきもの」という、強い固定観念があるからだ。そしてフィクションが扱うウィルスというものは、この後者のものが圧倒的に多い。相対的にリスクの低いウィルスが蔓延していて、それによって犠牲を蒙る世界の人たち、という物語は恐らく、ほとんど書かれた事がないからだ。
現代人というものは、既存の物語に沿って現実を解釈する。誘拐事件然り、戦争然り、強盗然り、ある程度のストーリーに基づいて現実を解釈する。だからこの「パンデミック」と言われる状況も、多数派の、大衆的な解釈をするような事になってしまうのである。
だから、COVID-19を巡るあれこれの騒動というものは、物語というものに対しての事件でもある。経済も停滞していく中での超金融緩和、中国の台頭と米国の黄昏、そんな中での、「対ウィルス戦争」という目標を得てしまった西側諸国の選んだ物語、それが今の状況でもある。
アウストラロピテクスが生まれたのが、300万~400万年前である。人類は概念というものを獲得して、他の生物と大きな差を得た…と言われている。目の前にありもしないものを想像できるのが人類の強みでもある。だが、その特性によって自壊していくのも人類である。ともすると、漁夫の利を得たのは中国ではなくて、人類以外の種かも知れない。人類が滅びるのが、数百年か数千年、早まったかも知れないからだ。
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このページは、2020年11月29日の午後11時27分に最初に書かれました。
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