静かな夜

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真夜中 路地に這って苔を舐めた
何の音もしないのである

もう何日も雨が降っていない
溶けたバターは薄汚い瓶に詰められて
倉庫の奥で出荷を待っている

痩せぎすの犬が喉を震わせて
乙女の脱ぎ捨てた外套に身を捩りつけて
みじめな顔で虱を振り払う

待ち草臥れて 涕泣する守衛が
金庫の鍵を捨ててしまって
急ぎでない縫物仕事をしている

僕は それを嫌に思って
路地に這って苔を舐めた
やっぱり何の音もしないのである


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