書き出し小説・採用分(4)

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。
書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、
諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。

書き出し小説大賞:天久聖一先生のデイリーポータル記事一覧

焼香の列が台所まで伸びて、婆ちゃんが無言でお米を研いでいる。

席を譲られた老アンドロイドは、そのまま沈み込んで動かない。

夜市で買った松茸が中国産で、父母の喧嘩は週を跨いだ。

風俗店の灯々が、夜学の帰り道を照らしてくれる。

説明を聞かなければ、死んだ猿がパイプ椅子に座っているだけである。

噂だけで辿り着いた風俗街は、茶畑が地平線まで続いていた。

賭け麻雀で停学になった先輩が、屋上でトランペットを吹いている。

競売の終わった家の庭に、冬の蝶がひらひらと舞っている。

長谷川の意味深なキーホルダーは、捜査を大いに混乱させた。

壊れた車のクラクションが俺の初夢を淫夢にしたのである。

白線の外側に死がある。この病棟には白線はない。

香典ドロボーは、もう一人のあたし。

高慢なマリーのピアノに鍵をかけてやった。トニーの前で恥をかかせてやる。

手品師と占い師が睨み合ったまま、空調の音だけが廻り続けている。


読者投稿にピリオドを打とうかと考えている

ある種の境地まで辿り着けた実感がある。
これ以上、悪目立ちするのも疲れてきたし、
そろそろ、投稿をやめる事を考えている。

その理由は、こちらのブログ
に書いたような事が漠とした理由であるけれども、
自分は、いささか、疲れたのかも知れない。

人間に回帰したい
生活に回帰したい
生業に回帰したい

回帰線目指して、交差点の先に行くのはやめておく。
そんな風な、蜃気楼のような気持ちで、
最後に書き出してみる。

投稿への野心を、かりそめにも捨てゝ、たゞ、本当に今、たつた今、
書き出したい、書き出しごと…。

ハッと目覚めると、海の上の月がいやに大きくて、
沈没の夢の余韻で、自分が透き通るようだった。

これからは、自分のペースで、自分の満足のゆく
ように書き出し小説を書く事を続けてゆこうかと思う。

小説そのものへのアイディア作りも兼ねたものにしたい、と
前々から考えていて、その為には、投稿自体を一旦、
ストップさせる必要があると思う。

書き出したければ、今後、このホームページに推敲しつつ、
練り上げて、つらつらと書き出してゆく。
それこそ、すぐ、そこで、書き出せる、という実践でもあるのだ。

書き出し小説とは、「小説は、衝撃的に、急転直下で突然始まる」
という本質を凝縮したようなものであると思っていて、
それならば、何処ででも、誰ででも、すぐにやっちまえばいいんだ、
と思う。

では、これにて、さらば。


しかし続ける事にした。
諸事情はこのサイトの何処かに書いてある。


父が入所する前に、鼻毛を切ってやろうかと、ふと考える。

音域の広い読経で部屋干しのブラウスが揺れている。

休日にビリヤード場で上司と鉢合わせた。共通の趣味は天保銭収集と判明した。

すれっからしのJ子にも、童話みたいな恋の時代があった。


まあ、考えが変わったのです。

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