静けさの

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「静けさの」

荒涼たる野は
おだやかにうねり
その丘に 一本の黒い裸木が
すっと お立ちになっておられる。

風吹かず陽も射さず
陰もない。

だが その枝ぶりに
一抹の不安を 抱懐された予感
悪い予感

あっ!

鋭利な刃が切り裂いた
彼を 温柔たる 緩慢たる
時流を!

的中した予感を胸に
彼は その巨体を
枯草の上に どうと倒した。

彼の肉叢は微生物に食い荒らされ
食い尽くされる
一片も残されぬ 残せぬ

彼は倒れた そして大地に
身をまかせた
悲しみさえ残らぬ

野は荒廃し
大地は滑らかにうねる
その丘には
何も無い。

ただ 静かな
不安を包む 大気

静けさの・挿絵


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