料亭の二階のお座敷である。
三味線の四重奏、かっぽれ、かっぽれ、よいとさーよいとさーと、俺と部下の鈴岡はお座敷に居た。俺たちを招待したモルガン商事のモルガン卿は、未だ来ない、酷く居心地が悪い。お座敷芸者たちは、高砂のでんでん太鼓がめでためでたーの、等々唄っているが、俺たちはどうすれば良いのだ。
鈴岡が足を崩した。俺は欄間の龍と睨み合って、調子外れに手拍子を打った。コンパニオンがお膳を持ってきた。白菜の漬物と、御粥、そして味噌汁だ。芸者がすうと居なくなって、入れ替わりにモルガン卿がやってきた。モルガン卿はその巨躯を俺と鈴岡の間に捻じ込ませて、
「マイナスドライバーはないですか?」
と、肩をすくめた。これは彼の十八番のジョークなので、
「オルタナティブも真っ青よ」
と返さなければならない。雨が降ってきた。酷い雨だ。横殴りの雨がこの界隈に叩き込まれる。水着のコンパニオンがやってきた。という事は、これからセメントの談合が始まるわけであって、俺と鈴岡は分度器で床の間の柱が87.6度である事を指摘して、そこからの黒田節を披露する、何時ものパターンだ。
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