「改題」
只 無言で跳躍する少女たちが居たのです
私はそれを コテーヂのデスクから眺めて居たのです
少女たちは何遍も何遍も飛びました
私は その圧に 無言の跳躍という圧に
すつかりやられてしまつて
原稿を落としてしまひました
てふてふの鱗粉が原稿用紙に落ちて
私は 少女たちこそ、ほんたうの”狂言自殺をするどぶ鼠”だと思ふ、
私は そのどぶ鼠の喉を潤す 小さな 気違ひ水のような存在なのです
「無題」
宇宙の袖ぐらいなら手が届きそうな
ダイナミックなモーションと オノマトペで
Jump 昭和のJump
子供たちよ御覧 あれが女だ
あれらが女たちだ
鶏の頸を絞め 捌き 煮詰めて灰汁を取り
スープをこしらえる者たちだ
圧、圧、圧、無言の圧
圧倒的な圧
若さと云う名の暴力だ
「無題」
虚ろな男根祭のその後で
妙にテンション上がっちゃったの
まるで舞踏病みたい 止まらないの
般若心経のアナグラムも止まらないの!!
膃肭臍(おっとせい)みたいにはしゃいじゃって
イキっちゃって
酒酒落落 畸人の如く 流連荒亡の愉しみで…
ぬわんつって
ぬわんつって 夏…☆彡
「都会の女」
無色透明でノスタルヂックな
L.A.帰りの夢を背負った
ダイヤモンドの行商人と
正しい薔薇の香りに溢れて
生姜醤油に漬け込んだままの
人生訓の短冊売りが
満天の星空や茨の道や 茫洋たる海原を
超えて待ち合わせ場所を
間違いながらも
出逢ったが百年目
ビルヂング出会い頭に
膝小僧同士をみみっちくぶつけあって
互いの名刺を懐の中で交換するのでした
先月閉園した養老院に忍び込んだ
若者のカップルは淫靡な遊びを愉しみ
この国で一番偉い人が病気になって
病棟から駆け出した船員たちが巡視船に飛び乗ってゆきます
これら有象無象の妄念から女のにおいが集まって
それは女になり
ビル風に耐えて摩天楼を闊歩します
それは 確かに 女だったのでした
「卵」
ひとはみな卵をずっとその懐で
温め続けている
なかには孵化させるひともいるだろうが
死ぬまで孵化らない卵もある
ほら 今日も 大事そうに卵を抱えたひとたちが
ラッシュアワーの満員電車に詰め込まれて
流れ 流されて
化学工場からたゆたう煙が
西の空へ消えていく
あの空の向こうに…
場末の女を抱いてその背中が思ったより
痩せていると思う時
テレビジョンの芸人の誘い笑いに白ける時
さあ、卵は、何時孵化えるのだろうか…
「彼岸花のドライフラワー」
産業廃棄の情熱を垂れ流したり街角のシンガー
聴衆がまるで夜みたいに大騒ぎ
祭りの後に花売り娘が客を引こうとスカートの裾を
スカートの裾を
見上げれば富士山が 紫煙をあげている
匿名希望の火山群が それに続いて
署名をしようと盛り上がる
碁盤の目のような精緻な書式の署名を
その署名を
あたしは側溝の中から
只、眺めていたのです
只、見つめていたのです
渾身の歯噛みは 冬の空に吸い込まれてゆきました
まるで彼岸花のドライフラワーみたいに
不吉な日だったのです
「無題」
真夏の人いきれ
駅前のデパートのティッシュ配り
娘である
花火がどんどんと上がっていく
娘は人混みをかきわけながら
ティッシュを配る
ひときわ大きな花火が上がる
歓声 嬌声 ハイビジョン・フルカラーの声色たち
娘も声を出す
宜しくお願いします、ティッシュをどうぞと
その娘の笑顔と 群衆の笑顔
ティッシュ配りの娘の笑顔と
花火を喜ぶ群衆の笑顔…
わたしはその娘がこの祭りで
一番美しいと思った
お愛想で思っているのではない
わたしのTシャツは汗でぐっしょり濡れている
だからシャッターを切った
フラッシュを焚いて、何枚も連写する
無論、心のキャメラで…
真心のキャメラで…
だからこれは わたしの念写グラビアの
ポートレイトである
この記事について
このページは、2016年8月15日の午後4時01分に最初に書かれました。
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