手術のリスクと医療統計

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手術のリスクは、低く見積もられる、というお話。
 
私の父は、心臓のバイパス手術をした後、脳梗塞を発症した。
糖尿病であったため、術後のストレスで血糖値も上がり、
ストレスも含め血栓ができたものと思われる。
 
だが…それがカルテに書かれる事はなく、
心臓の手術をしたところにその話をしても門前払いされ、
つまり、それが医療統計に残る事はない。
医療統計どころか、病院の記録にも残らないだろう。
 
「直接の原因とは言い切れない」という理由で、
手術のリスクは、公表されている数字より低く見積もられている
可能性がある。例えば持病があって、ある手術をするにあたって
その持病は手術のリスクになる…場合、術後の合併症や障害は、
手術を選択した要因というより、その持病が原因として
カウントされてしまう。
 
診療する科が変わり、病院が変われば、その後の状態を追跡
する事がないので、あくまで、数字になっているリスクは、
捕捉が可能な分だけである。捕捉されてない分は足し算しないと
いけない。つまり、手術のリスクはもっと大きい。
 
医者の性質として、「他の医者や病院の批判はしない」という
傾向が強くある。むしろ、「他の医者、他の病院でも同じ
診断を下すと思いますよ」と言う傾向が非常に強い。
これは、日本の医療が標準化されているという意味合いもあるが、
裏返しとして、お互いにミスをかばいあっているという
意味合いもあろう。
 
また、直近の手術や治療ならともかく、だいぶ前の手術や治療が
トリガーになっている場合等々、複合的な理由が考えられる
場合の方が多いために、常に医者は都合の良いように考えて
しまうのだろう。
 
数字を出す医師はまだマシで、「こんな可能性もある」「あんな可能性もある」
「確率?わからないよ」…発生確率が不明なので、リスクも不明、
故にすぐに治療すべきだ!というロジックの医者も少なからずいるし、
僕はそういう人を見た事がある。
 
そういうのを含めて、総合的に、治療する/しないを判断するのが
良い医者なのだろうが…そんな医者はもう日本にはいない。
いや…そもそも…名医というのが幻想なのだ…。
 
そもそも、ログを詳しく追っていく、という習慣のない医療業界において、
個人情報保護法が適応されていく世の中になってしまえば、
医療統計そのものの不正確さというのは避けられないと思われる。
だが、それをあまりみんな言わない、不気味さもある。
医療統計を正確に取ろうとすれば、ますます、市民は病院に隷属
するような世界にもなってしまうので、現状が悪い…とも言い切れぬ。
 
前立腺がんで死ぬ事に怯えて、前立腺を全部摘出するような
人がヒーローになってしまう時代だ。そして、がんや、脳梗塞を
早期発見できなかった人は悲劇のヒーローに仕立てられる。
冗談美談のようで、実に金満的のようでもある。
 
統計学を持ち上げているのではなく、統計を記録するというのは、
実に人間的な営みの連続である…という事だ。実に人間的な統計であるが
故に、その読み方については、「統計」として正面から読む
訳にもいかないように思うのである。やはり統計学だけでは
不足であり、その統計の分野の知識は必ず必要となろう。


この記事について
このページは、2019年8月22日の午前5時06分に最初に書かれました。
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